酒屋が選ぶ焼酎大賞、というものがある。
https://shochu-taisho.com/
焼酎が、芋・麦・米・黒糖・泡盛の原料別で約30−40本ずつブラインドで用意されて、そちらをテイスティング、評点して、大賞を毎年決めようという試みである。コンセプトとして、本屋大賞のようなものかと。
さて、こちらに評点の権利はないものの、ビジターとして参加させてもらう機会があったので、それのレポートを書きたい。
結論からいうと、泡盛しか飲めなかったので(時間が足りなかった)、ので、泡盛のティスティングの感想となる。
そして、なぜ泡盛だけだったのか、みたいな話になると、そもそもティスティングやこういったコンペの仕組みの話になるので、そちらも後述したい。
今回の泡盛の種類は32つ。今回、挑戦したかったのは、香ってみて、飲んでみて、美味しい・美味しくない、という主観的で即時的な評価ではなく、全種類のお酒が相対的なバランスを保てるように、つまり、フレーバーホイールのようなものに、全てのお酒がしっかりマッピングされた上で、それぞれの良し悪しというのを点数化したいと思った。
(フレーバーホイールとは?という人はこちらを。
https://www.kikkoman.com/jp/quality/research/about/functional/flavorwheel.html
こちらは醤油ですが、コーヒーやワインなどほぼ全ての液体にあるかと思います。このホイール上のワードやグラデーションは全て違います)
もちろん泡盛にはお酒の協会がつくったものがすでにある。
https://awamori-news.co.jp/2017_12-08_fostering-master-of-awamori-flavor-wheels/
これがダメだとは思わないが、これを参考にしても、自分自身の考えるキッカケにならないと思ったので、これを見ないで自分で似たようなマッピング要素を考えるところから始めた。そもそも、今回の用意されたお酒がこのマッピングに満遍なく当てはまるか分からないので(王道の泡盛で作られたフレーバーホイールと今回のお酒の母集団としての重なりは未知数)、統計的には少し怪しいと思った節もある。
方法としては、以下のようなやり方で進めた。
・まずは香りで全体を把握した(飲むと分からなくなることが多いのと、再試行が簡単なので、そのような現実的な問題から)
・異なる泡盛に感じる同じ要素を抽出して、グループに分けた。もちろん、最初からいくつのグループになるか分からないので、仮に名前を付けながら、徐々に同じにまとめたり、やっぱり別だと分別していった。
(つまり!例えば、5番を嗅いで、2番が所属しているグループと同じ香りだと思ったら、2番を確認したり、逆に違うはず番号を参考に嗅ぐ、といったように、ずっと順繰りに何往復もしながら評価していった。これだけで膨大な時間がかかった)
香りのグルーピングの結果、今回の泡盛のサンプルからは、以下のようなグルーピングが可能だという評価を得た(評価といっても自分の観点だけど)。ちなみに、僕自身はどう書いてもオフフレーバーという認識はないです。あと、一番最初の低アルコール、途中の樽熟成は評価しなかった。
A.ガス
アルコールの香り、脂っぽさ、焼けたような臭いなど含めてガスっぽさがみられる臭い。他との違いは、こちらは確実に匂いが鼻頭をつくぐらい強い。
2.5.9.11.14.16.18.19.21.23.25.26.29.30.31の15つが該当
B.黒カビ
麹やカビっぽさを感じる臭い、実家感。あとは特徴的なのは、蔵だったり製造してる現場と似た臭いということ。
3.4.8.13.17.22の6つが該当
C.花
こちらはどうしても良い言葉が思いつかないが、絶対嗅いだことあるような蜜っぽさなど、要素が明らかに1や2とは違う香りだった。
7.12.27の3つが該当
D.お酢
完全に酢酸を連想させる香り。これは個体差はなく、ほぼ同じに感じた。
10.15.20.24.32の5つが該当
なんか色々言ってるわりに、一番多いのがガス臭ってどういうことやねん、という気持ちもある。ただ、このガス臭をこれ以上分解すると、かなり分裂してややこしいのと、これ以上のワードが見つからなったということでもある。センスでしょうね。このガス臭というのは、原料特性やモロミではなく、蒸留時の個性が大きく反映されているものだと思っている。
28の香りが、AともBともいえず決められなかった。なので点数は高いです。(こういうのが、安い一般酒だったりする笑)。
以下に、それぞれに付けたコメントを簡単に書き起こしていく。もちろん、香りだけでは、点数はつけれないが、同じ匂いならば、同じ点数であるべき、という原則が働く。なので、仮に点数をつけたときに、そういったバラツキがあれば、自分の主観が間違えているか、またはグルーピングが間違っているということになるので、その都度、嗅ぎなおして修正していった。
またグルーピングの名前の通りだが、Aだけがガスという大雑把なワードで、まだ個別の輪郭を掴めていない。というより、そのガス臭(アルコール臭)が強いが故に、飲んでみないと分からないという状態かもしれない。
ですので、香りだけなら、Cが一番個性は感じている状態であった。
1(低アル、省略)
2 A 、ブドウ、還元、アルザルのクレマンのような匂いも
3 B、い草、たぶん銘柄は時雨
4 B、乳酸、カビは抑えめな
5 A、油が浮いてるぐらいオイリー
6(樽、省略)
7 C、甘い香り、白いバラ?もう少し日常的な何か
8 B、特になし
9 A、麦、というより炒ったお茶のよう
10 D、お酢、酸味を感じるような感覚
11 A、お酢も少し感じるのは引っ張られたからか?ややライト
12 C、蜜、炊いた里芋
13 B、キャラメル
14 A、麹っぽさも、焼いた香り
15 D、お酢、以上。
16 A、還元、りんご
17 B、ブドウっぽさもあるけれど、少し違う気も
18 A、特になし
19 A、土っぽい
20 D、お酢、大手の匂い(褒めてる)、ぽんかん、豆
21 A、黒糖、還元に似た匂い、島のような硫黄臭さ
22 B、すっとミネラル、餅のような旨み
23 A、フーゼル、というよりは傷んだバナナ
24 D、お酢
25 A、ブドウ、トップに甘さがある
26 A、ミネラル、塩、海とは違う酸っぱさがある
27 C、若い頃のアレ
28 A、餅に醤油、少しミネラル感
29 A、真薯
30 A、プールサール、アルコールがしっかりいて
31 A、硫黄、フーゼル?プールサールみたいな?
32 D、お酢
一旦、香りのマッピングが終わり、全体的な概要が掴めた。いわゆるAが王道と一番大きい母数としてありながら、B-Dが、そこから少しだけ違う要素をみせてる。
この時点でフレーバーホイールと言いながら、違う様相になってきた。フレーバーホイールは、その香り要素というかグループ名ー仮にクラスと呼べばー、そのホイールというクラスが満遍なく分布する(視覚的にも円周上に一周まわるように)。ただ、実際には、香りだけではあるが、飲んでみると、味わいのお互いの距離が近いもの同士をまとめようという試みになるので、クラスは後から決める。距離の測り方は、数学的にはなるが、次元を個数を決めて、次元を合わせることである。
次に、この香りの元で全体を試飲していき、それぞれに点数をつけていった。正直、香りだけで点数をつけているわけではないので、香りのグルーピングがどれだけ意味があったかは分からないが、上記でいったように、近しい感じ方をするお酒は同じような評価になるべきなので、それにかなり意識的になることができた。
それぞれ香りのプロファイルに改行して点数を書き込んでいる。
(+1)の表記は、他と比べてその点数であるべきなのだが、個人的な好みから加点したい、という意味を込めている。
1(低アル、省略)
2 A 、ブドウ、還元、アルザルのクレマンのような匂いも
→5点、カビっぽさ
3 B、い草、たぶん銘柄は時雨
→6点、すっと甘い
4 B、乳酸、カビは抑えめな
→5点、香りのまんま
5 A、油が浮いてるぐらいオイリー
→5点
6(樽、省略)
7 C、甘い香り、白いバラ?もう少し日常的な何か
→6点
8 B、特になし
→7点(+1)、蜜の感じ
9 A、麦、というより炒ったお茶のよう
→7点
10 D、お酢、酸味を感じるような感覚
→7点(+1)、辛味・カビ・麹の感覚がちょうど良い
11 A、お酢も少し感じるのは引っ張られたからか?ややライト
→7点(+1)、上と同じでバランスよい
12 C、蜜、炊いた里芋
→8点、パンチ力
13 B、キャラメル
→5点、弱い甘さ
14 A、麹っぽさも、焼いた香り
→8点、焼いた感じ・ミネラル
15 D、お酢、以上。
→7点、カビ・甘酸っぱい
16 A、還元、りんご
→6点、薄い甘さ
17 B、ブドウっぽさもあるけれど、少し違う気も
→6点、甘い・麹
18 A、特になし
→6点、辛い
19 A、土っぽい
→7点、そのまんま、末っぽさ(白百合かな?)
20 D、お酢、大手の匂い(褒めてる)、ぽんかん、豆
→7点(+1)、ガス感がシンプルだけど、すべっている&スルッと入る。
21 A、黒糖、還元に似た匂い、島のような硫黄臭さ
→6点(+2)、甘酒
22 B、すっとミネラル、餅のような旨み
→6点(+1)、スッと飲める
23 A、フーゼル、というよりは傷んだバナナ
→6点、かるい
24 D、お酢
→7点、ガス感そのまま、20と似ている味
25 A、ブドウ、トップに甘さがある
→6点、まんま
26 A、ミネラル、塩、海とは違う酸っぱさがある
→6点
27 C、若い頃のアレ
→9点、コクがある感じ
28 A、餅に醤油、少しミネラル感
→7点(+1)、ミネラル、湯気のような
29 A、真薯
→9点、焼き、キャラメル(ありがちだけど)
30 A、プールサール、アルコールがしっかりいて
→7点(+1)、海老、コク、焼けた感じ
31 A、硫黄、フーゼル?プールサールみたいな?
→9点、ほんとにバランス
32 D、お酢
→9点、桃、コク
この点数を改めてみると、やはり後半に高得点が多いのは、比較的全体を飲んだ上で、高得点の幅がみえたので付けているというきらいがあるので、この得点のうえで、もう一周ぐらい飲んでみて、前半にも同じような感覚のものがあったのかという検証をすべきだと思った。これに関しては時間が足りなかったように思える(ある程度はできたが)。要はM1でも最初は不利と言われるアレである。
ティスティングに関しての感想としては、さらに箇条書きすると、
・ボキャブラリーがワインへ寄っている。より他のお酒のティスティングをして言葉を増やすべき
・米、フーゼルという一般的なワードはある程度どれに対しても当てはまってしまうので、その上で差別化される表現を考える(身につける)べきだ
・「そのまんま」という表現が示しているが、香りの感じが飲み口によって変化がおきない、ある意味、単調な味わいはあまり得点に反映されない。尤もらしいのだが、これは香りを嗅いだ上で飲むという行為をしたからでもある可能性がある。
・逆に、強い香りに飲み口の甘さが伴っていたり、逆に、優しい香りに強い飲み口があって、そのバランスが偏ることがないと、個人的には、「美味しい」=「高得点」というケースが多々あった。これは本来の官能評価としては、通常のものなのか、どうか。
総じて、自分自身の指標としては、フレーバーホイール、というよりは、各お酒の距離という相対的な感覚と、その各々が持っている次数に対する強度、が美味しさへの相関を持ち得たように思えたので、こちらは引き続き考えていきたい。
ひとまずお酒の銘柄発表を待ちたい。また上記、フレーバーホイールに関しての考えや審査会という形式に対しての考察、別のところで書きたい。